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〜 認定NPO法人化記念 第4回 可視化技術ワークショップのご報告 〜
| 主催: | 認定特定非営利活動法人 綜合画像研究支援(IIRS) |
| 共催: | 日本女子大学オープンリサーチセンター(ORC) |
| 後援: | 社団法人 日本顕微鏡学会(JSM) |
細胞分裂のイメージング
- ここまで見えてきた細胞分裂のメカニズム -
去る2007年11月10日(土)に綜合画像研究支援と日本女子大学オープンリサーチセンター(ORC)(共催)、日本顕微鏡学会(JSM) (後援)により、ワークショップ『細胞分裂のイメージング - ここまで見えてきた細胞分裂のメカニズム -』を開催いたしましたのでご報告致します。
| 日 時: | 2007年11月10日(土) ワークショップ/13:00〜17:50 アカデミックサロン/18:00〜20:00 |
| 会 場: | 日本女子大学 80年館 851番教室 ワークショップ/八十年館851番教室 アカデミックサロン/日本女子大学新泉山館 |
プログラム
13:00〜13:10 開会の挨拶
綜合画像研究支援 理事長 大隅 正子
・座長 北里大学名誉教授 山科 正平
13:10〜13:45 細胞分裂の研究のこれまでとこれから <PDF 178KB>
新潟医療福祉大学健康科学部 堀田 康雄
13:45〜14:20 染色体構築のための分子メタボリズムを見る <PDF 128KB>
癌研究会癌研究所実験病理部 広田 亨
14:20〜14:55 細胞分裂における細胞小器官の変化 <PDF 382KB>
北里大学医学部解剖学教室 玉木 英明
14:55〜15:30 ゴルジ体・小胞体の形成と維持のための分子機構を探る
特にp97ATPaseによる膜融合の観点から <PDF 126KB>
九州大学大学院医学研究院・分子生命科学系部門細胞工学 近藤 久雄
15:30〜16:00 休 憩
・座長:弘前大学農学生命科学部 鮫島 正純
16:00〜16:35 植物の細胞分裂:微小管形成中心から細胞板形成まで <PDF 206KB>
自然科学研究機構基礎生物学研究所生物進化研究部門 村田 隆
16:35〜17:10 収縮環の微細構造と形成機構:分裂酵母の細胞質分裂 <PDF 194KB>
学習院大学理学部化学科 馬渕 一誠
17:10〜17:45 分裂酵母を使った分裂期染色体の動態イメージング <PDF 143KB>
情報・システム研究機構国立遺伝学研究所 仁木 宏典
17:45〜17:50 閉会の挨拶 アカデミックサロンへの案内
日本女子大学理学部 永田 典子
18:00〜20:00 アカデミックサロン(於、日本女子大学 新泉山館)
(敬称略)
- ● 理事長 挨 拶
- ● ワークショップの企画にあたって
- ● 第4回可視化技術ワークショップを終えて(開会の挨拶に代えて:認定NPO法人の説明)
- ● 「第4回可視化技術ワークショップに参加して」という題材にて講演者・参加者の方々に感想を頂きました
(順不同)(敬称略)
挨拶
日頃は当認定NPO法人・綜合画像研究支援の活動に対しまして、温かいご支援を頂きまして、厚く御礼を申し上げます。
さて、当法人の創設以来、人材育成事業の一環として毎年開催して参りました、「可視化技術ワークショップ」も、お陰様にて本年度で4回目を迎えました。
本年度は、牛木辰男先生と広田亨先生を中心として会が企画され、『細胞分裂のイメージング―ここまで見えてきた細胞分裂のメカニズム』と題しまして、哺乳動物、植物、そして酵母に至る、幅広い生物分野を対象として、7人の先生方をお迎えして、本年も日本女子大学オープンリサーチセンターと共催し、日本顕微鏡学会の後援のもとに、ワークショップが開催されます。
特に本年度のワークショップは、3月1日から念願の認定NPO法人が国税庁によって認可されてから初めて開催されますので、それを記念して、「認定NPO法人化記念」と銘打って、北は新潟、南は九州から優れた先生方を講師としてお招きして、実施することに致しました。
この会合は、生命科学領域における可視化技術を活用した研究の推進、研究支援、研究者・技術者の人材育成、および啓発を目的として、一般の学会が開催する講演会とは一味違った内容を目指しております。また、講演会終了後には、アカデミックサロンを計画し、ご参加された方、会員、講師、研究協力者が互いに交流をしていただく場を用意しております。
この会にご出席頂きます方々が、可視化技術の生命科学における貢献についての最先端の知識を取得されると同時に、相互の親睦を深め、今後の活動の展開について忌憚なく語り合う機会となり、科学技術の発展の一助になれば、幸いに存じます。
ワークショップの企画にあたって
本年度のワークショップは、『細胞分裂のイメージング―ここまで見えてきた細胞分裂のメカニズム−』と題して開催することとなりました。
ご存知のように、細胞分裂は細胞の営みの中でもっとも本質的な現象ともいえます。もともと細胞には永遠の「いのち」があるわけではなく、細胞分裂により自己を複製しながら、「いのち」を受け継いでいます。その点で、最初の細胞がこの地球上に現れてからの38億年という月日も、莫大な細胞分裂の繰り返しによる「いのち」のリレーによるものといえなくはありません。ちょうど、オリンピックの聖火のように、細胞分裂により遺伝子という火が受け継がれながら、細胞は生き続け、生物の進化を進めてきたといえるでしょうか。一方で、私たちそのものも、1個の細胞から細胞分裂を繰り返し、成長し、また常に細胞分裂により体をリニューアルさせながら生きているわけです。
細胞分裂の基本は、遺伝子を複製し、均等に分配してほぼ同一の細胞を複製することにあります。その基本的な現象は過去100年ほどの生物学の研究でもっとも明らかにされてきました。さらに近年の分子細胞生物学の進歩により、細胞分裂時の単純な形態変化だけでなく、細胞分裂の制御やゲノムの分配についての分子メカニズムが急速に解明され始めています。一方で、こうした分子メカニズムの研究が進むにつれて、その機能する現場を直接可視化する必要性がますます高まってきているのではないでしょうか。
そこで、本ワークショップでは、細胞分裂のこれまでの研究を振り返るとともに、現在の最先端の可視化技術で見た細胞分裂について俯瞰することができるような講演を集めました。また、企画にあたっては、動物に限らず多様な生物の細胞分裂を対象とし、単に染色体の変化だけでなく細胞分裂時の多様な出来事を眺めることができるような工夫を凝らしました。これにより細胞分裂という現象を、より立体的で複眼的な視点から見直すことができるのではないかと期待しています。本ワークショップが、参加者の方々にとって有意義なものとなりますよう、企画したものの一人として切にお祈り申し上げます。
第4回可視化技術ワークショップを終えて
開会の挨拶に代えて:認定NPO法人の説明
本日は、このように大勢の方がご参加下さいまして、有難うございました。
当NPO法人の人材育成事業の一環として行っております、「可視化技術ワークショップ」は、2004年に当法人が設立されてから今年で第4回目になりますが、念願の認定NPO法人の取得が今年ついに達成できましたので、本日の会はそれを記念する意味も込めて、開催致しました。
そこで、本日のプログラムを始めます前に、ご挨拶に代えて、認定NPO法人とはどのようなものかについて、説明させて頂くことに致しました。
さて、皆様が毎日テレビや新聞で耳や目にするNPOという言葉の中には、NPOとNPO法人、さらに認定NPO法人という3種がございます。まずNPOとは、英語のNon Profit Organizationの頭文字を取ったもので、ボランティア活動などの社会貢献活動を行う、営利を目的としない民間団体の総称です。
次に、NPO法人とは、特定非営利活動促進法(NPO法)に基づいて法人格を得た、「特定非営利活動法人」の一般的な総称です。
では、認定NPO法人とは何かと申しますと、NPO法人の中で、その運営組織および事業活動が適正であり、公益性に資することについて一定の要件を満たすことが、国税庁による審査を受けて合格して、国税庁長官から認可を受けた法人を指します。
ところで、認定NPO法人の内容を紹介しますと、その要件は、広く一般から支持(寄付など)を受けており、活動や組織運営が適正に行われており、法人に関する多くの情報を公開していること、などであります。
認定の有効期間は2年で、再申請により継続が可能です。認定NPO法人に対しましては、税法上の特例措置として、寄付金控除などの税の優遇措置を受けることができます。そして、寄付金の中には、(1) 個人の寄付金、(2) 法人の寄付金、(3) 相続人などが贈与した相続財産、などがあります。この特例措置が重要なことであります。
では、NPO法人の活動分野には、17のジャンルがあります。その中の13番目の「科学技術の振興を図る」というのが、私どものNPO法人のジャンルです。実はこの分野は、2006年から加わった新しい分野でであり、私どもNPO法人はこの分野で特定法人化を申請しました。
ところで、NPO法人の団体は全国に32,640あり、その中での認定NPO法人は73で、わずか0.22%に過ぎません。また、私どものNPO法人の「科学技術の振興を図る」のジャンルのNPO法人は全国で1,444を数えますが、その中で認定を取得しているものはわずか2団体、0.14%でであり、しかも、私どもはその第1号として今年3月1日にこれを取得致しました。
ついでに、私どものIIRSの活動について紹介させて頂きますと、私たちは3種の事業を実行しており、このワークショップは、人材育成事業の一環として、設立当初から実施してきました。また、今年度から「ライフサイエンスにおける可視化技術の実態と将来展望に関する調査研究」というテーマで、新技術振興渡辺記念会から助成金を頂き、調査研究事業もスタートしております。研究支援事業も軌道に乗って参りまして、これまでに50例ほどの研究支援を、大学・研究所・企業に対して行って参りました。
とはいえ、当法人はまだまだ小さい団体で、会員数87名、個人賛助会員数31名、団体賛助会員数13に過ぎません。そして、理事7名・監事2名、パート事務局員6名で構成しております。私どもは大勢の方に研究協力して頂く準備がありますので、振ってご参加をお待ちしております。
認定NPO法人に認可されたことは、大変稀少価値があると自負しております。つまり、多くのNPO法人の中で、一種のハイステイタスを認められたと考えられますが、それが、多くの方から信頼して寄付を含めたサポートを受ける価値があり、また大きな自負を持って、事業に当たることができると考えております。そして、スタッフ一同、この資格に恥ないように、頑張っております。
最後に、今回のワークショップのプログラムは、牛木理事が中心になって作成して頂きましたので、ここで先生のプログラム作成の際の目的についてお話し頂きたかったのですが、時間の都合上、先生のメッセージをアブストラクトに寄せて頂きました。
本日のワークショップが皆様にとってご満足頂けるようになりますように祈りながら、開会のご挨拶とさせて頂きます。
「第4回可視化技術ワークショップに参加して」という題材にて講演者・参加者の方々に感想を頂きました (順不同)
1954年に細胞の研究に入り、各地で実験を続け、1998年奈良先端大から退職する迄研究生活をし、その後は大学の学部教育を中心として10年を過ごしてきた私に、久しぶりに緊張と歓びを与えてくれたワークショップでした。先ず、大隅理事長からの認定NPO法人の説明を受けて希望が拡がった。日本国が行う基礎研究支援は、文部科学省がその大半を占め、厚労省・農水省の研究費の殆どは応用研究に向けられる。これは多様性と情報交換を発展の基礎とし、且つ、Originalityが不可欠な基礎科学にとって、日本の産業界からの基礎研究への支援が少ない事と共に弱点になっている。欧米先進国の支援源の多様性・高額性に比べて貧弱である。このような日本で、認定NPOの発足は科学と社会に希望を湧かせる大事です。綜合画像研究支援の活躍の発展に期待し、自分も何か役立ちたいと感じました。
その様に感じたのは、ワークショップの発表・討論の内容と、参加メンバーの勢いが素晴らしかったからです。何年・何十年ぶりにあう研究者間の情報交換、先端的研究者が対象にする細胞とその分裂・増殖・分化の解析手段・技術の進歩、技術と知性から生まれる結果の美しさ、成果からうまれる理論と創造が作り出す像は、研究成果を学生に伝えるだけの大学教員を若返らせてくれます。即ち、研究高齢者に活力と知力を与えてくれました。研究と教育の同時進行は国の科学の発展に不可欠ですから、このワークショップは大いに貢献したと思います。
20世紀初頭から、光学顕微鏡システムと染色法により進歩してきた細胞のイメージング・可視化技術は、近年、更に急速な進歩を生み出しています。静的観察から動的観察に移行し、動くものを時間を追って解析する手法の発展が、その発表法とその背後にあるメカニズムを考える事に進行している事を感じました。染色体の凝集と分散、ゴルジ装置と小胞体の断裂分散と会合などが、観察と併せて分子生物学的考察とそれに基づく解釈に発展し、新しい研究体系を生み出している点も素晴らしいと感じました。研究者自身は研究の社会的貢献の大きさを考えるよりも、自然や事実の探求に夢中であるかも知れません。 然し、その成果は健康医療福祉/医学と治療に大きく貢献するはずです。1950年代のDNAの塩基配列の解析が、現在、生物学、医学、農学、法医学、進化学などに大きく幅広い成果を産んでいるかを考えると容易に予想できます。その時代の社会が求める研究成果も必要ですが、大きな進歩は普通人には予想もつかない所で起こるのも事実です。すぐには何の役に立つのか判らないことにも、興味と探求心の塊になって、研究を続ける研究者こそが本当に大切であると思いますし、彼らを支援することは国の政策であるべきでしょう。
植物細胞や酵母は、農業・発酵産業から切り離せないが、経済の他に基礎科学の研究の材料でもあります。 既に、産業や日常活動に充分に活用されていても、これらの生物を使った基礎研究、細胞分裂の機構解析は進められねばならない。機構解析には、それに適した生物を選ぶ事の重要さと同時に、最新の解析装置、例えば電界放射型走査電子顕微鏡、や抗体染色と共焦点走査顕微鏡の組み合わせなどの複合装置の必要性を本ワークショップの発表から再認識しました。
最近社会に役立つ研究、地域に貢献する研究が求められますが、その前に良い基礎研究を求めねば飛躍的に貢献する研究は生まれないでしょう。今回、学問・研究の為に設立された認定NPO法人・綜合画像研究支援の出発とワークショップの開催は、日本全体と基礎研究促進に大きな前進であると考えます。それを実施した、政策者、国税庁と内閣、に敬意と感謝をします。更に、「認定NPO法人化記念」の会に参加出来たこと、会が盛会であったことを喜んで居ります。
まず初めに、ワークショップの開催をお慶び申し上げるとともに、演者に選んでいただけたことをお礼申し上げます。
ゲノム解析が進み、プロテオミクスの技術が進んだことにより、生物現象に関わる因子(遺伝子、タンパク質)の探索は以前に比べて容易になったと思います。しかしながら、因子がわかった後でどのように解析を進めるかについては定まった方法がありません。このワークショップでは、因子がわかったあと可視化技術で何ができるのか、さまざまな研究例を提示していただきました。分解再構成の手法を用いて膜系の分散と再構築に関わる因子のアッセイを行っている近藤先生の講演から、収縮環のアクチンフィラメントの向きを丹念に調べた馬渕先生の講演まで、多様な研究例が聞けたことが良かったと思います。
また、既存の研究材料にとどまらずに顕微鏡観察に適した新しい材料を開発する仁木先生の講演は印象に残りました。近年蛍光タンパク質の普及により生きた細胞内におけるタンパク質の分布が比較的簡単に見ることが可能になりましたが、既存のモデル生物が可視化に最善の材料とは限りません。その点、日本産の新しい分裂酵母を使う試みは、既存の分裂酵母のリソースが使えるとは限らないだけに挑戦的だと思いますが、一つの方向性を示すものだと思います。
最後に、このような素晴らしい研究をされている先生方と一緒に講演をすることができて大変嬉しく思いました。ありがとうございました。
「酵母の解剖」82年8月10日第2刷発行版を、学部学生の時に購入してからこれまで25年ほど手元に置いてきた。もう一冊、姉妹本というべき「細菌の解剖」もほぼ同時期に手に入れている。これまで、大腸菌を用いて原核生物でのDNAの複製と分配機構を中心に研究をしてきたこともあって、実用の面では「酵母の解剖」はどちらかというと出番は少なかった。が、それでもこれまで手放す事なく所有続けている。当然その編者の一人である大隅正子先生については、この本を通じて学生の頃から存知あげていた。それもあって今回、大隅先生が中心になって活動されている研究会での発表の機会を得て、大変名誉なことのように感じた。
国立遺伝学研究所で研究者として完全に独立したときに、大腸菌のDNA分配の研究を続けながら、他の生物でもDNA分配をやってみようと思った。選んだのが分裂酵母であった。分裂酵母は真核生物であるが、見かけは桿菌である大腸菌と同じで、2分裂する点でも、全く、違和感がなかった。ただ、分裂酵母でのDNA分配の研究は、分子のレベルでの理解がすごく進んでいて、新たに何が自分で貢献できるのか考えると二の足を踏んでいた。その時に、分裂酵母でも染色体が3本見えるというものがあると知り、これは主流になっているSaccharomyces pombeとは違う事ができると思った。その分裂酵母S.japonicusは確かに、染色体がよく見える。DNAに結合するヒストンを蛍光タンパク質で標識したジャポニカス分裂酵母株では、生きた細胞内で染色体DNAが別れ離れて行く様が詳らかに見て取れる。これまでの酵母では、観察できなかった現象である。今、私たちはその様子をききちんと記載していくことに努めている。そして、その上で、染色分配特有の表現型に異異常をきたした変異株を分離しようと考えている。蛍光タンパク質をつかった光学顕微鏡観察は、今回の研究会でもその有用性と技術の高さを示していた。しかしながら、解像度を求めたときに、やはり限界を知らされる。分子に近づいて行こうとすると、電子顕微鏡での観察が必須である。馬淵一誠先生の分裂収縮間のアクチンフィラメントの配向の解析は電子顕微鏡ならでの研究成果であった。見る事で解き明かせることはまだまだたくさんある。可視化技術の重要性と可能性を再認識できた会であった。
「細胞分裂のイメージング―ここまで見えてきた細胞分裂のメカニズム―」をテーマとして、第4回可視化技術ワークショップが11月10日(土)に日本女子大学で開催された。昨年の第3回のワークショップには、日本女子大学オープンリサーチセンターのメンバーとして、半ば義務的な思いで参加したのであるが、とても興味深く内容の濃い講演会であった。今年も昨年と同様に、生物学の基本中の基本である細胞分裂が取り上げられたが、期待は裏切られることはなく、細胞分裂に際して生じる様々な問題点について、じっくりと学ぶ機会が与えられ有意義な一日であった。
私は動物生理学者なので、細胞分裂の詳細については素人同然であった。それで、「細胞分裂時の細胞小器官の変化」についての、北里大学医学部の玉木英明先生のご講演と九州大学大学院医学研究院の近藤久雄先生のご講演が、特に興味深かった。玉木先生は主として解剖学的な観点から、細胞分裂期にゴルジ体や小胞体がどのように変化し、再生されるかを示された。細胞分裂というと、核膜や染色体、紡錘子や動原体に関心が集中するが、ゴルジ装置や小胞体にも、著しい変化が生じることがよく分かった。特に、これらの細胞小器官が、細胞分裂時に断片化した後に、再構成されるというのは驚きであった。つづいて、近藤先生が分子生物学的手法を駆使して、新規膜融合機能に関する膜融合蛋白を次々と解明された経緯を、分かりやすく解説された。質疑応答で、小胞体は断片化した後も蛋白合成は可能だが、ゴルジ体は蛋白輸送ができなくなることに言及された。いずれも核膜由来で形成されるにもかかわらず、どうしてこのような違いが生じるのかは、内膜系の形成過程の解明を含めて、今後の問題でありとても興味深いと、アカデミックサロンでも話しておられた。また、情報・システム研究機構の仁木宏典先生の、見事な動画を多用されたご講演では、最新のイメージング技術の素晴らしさを目の当たりにするようであった。特に、核膜を残したまま核分裂をする分裂酵母で、2匹のクラゲが触手を伸ばしながら、反対方向に進んで行くような映像は、今でも鮮明に脳裏に蘇ってくる。
近藤先生は関門海峡を超えると大学院生が来なくなると嘆いておられたが、居ながらにしてこのような講演会に出席できる有り難さを、改めて噛み締めることのできる一日でもあった。
科学研究分野で、わが国初の認定NPO法人化、おめでとうございます!大隅正子先生を筆頭に認定NPO参画の方々に心よりお喜び申し上げます。
さて、認定NPO法人化記念第4回可視化技術ワークショップ「細胞分裂のイメージング」に参加して、多くの新しい知見を得ることが出来て、「眼から鱗が落ちる」感がいたしました。私の研究室からは3名の大学院生も参加して、皆同じ気持ちです。私の研究室では、膜タンパク質であるヒトABCトランスポーターの機能解析や細胞内局在を研究しています。タンパク質のフォールディングにおいて、ジスルフィド結合は重要な役割をしていることは以前から言われてきたことですが、最近私共は分子内・分子間ジスルフィド結合が形成されなかったABCトランスポーターは、タンパク質としての構造が不安定化され、ミスフォールドタンパク質としてタンパク質分解経路(ERAD)へと分泌されていることを見つけました[1]。タンパク質の品質は、様々な管理機構によって精密に管理されていますが、タンパク質がそれぞれの機能や酵素活性などを最大限に発揮するためには、正しい立体構造を獲得していることが必要不可欠です。タンパク質のフォールディングにおいて重要な鍵を握っているのが、小胞体内でなされる様々な翻訳後修飾で、代表的なものにN結合型糖鎖付加やジスルフィド結合の形成があげられます。
今回のワークショップで、小胞体・ゴルジ体の形成と維持、および細胞分裂における細胞小器官の変化は、私共にとって新鮮で且つ大きな衝撃でありました。玉木英明先生(北里大学医学部)と近藤久雄先生(九州大学大学院医学研究院)のご講演を拝聴しながら、小胞体やゴルジ体の中でのタンパク品質管理機構は細胞分裂とともにどのようにダイナミックに変化しているのだろうか?「ふしぎの国のアリス」のように、ひとり空想の中に入っていってしまいました。今回のワークショップは、私共の研究にとって重要な契機とアイデアを提供してくれました。大隅先生をはじめご講演をしてくださった先生方に、心よりお礼を申し上げます。
[1] Wakabayashi, K., Nakagawa, H., Tamura, A., Koshiba, S., Hoshijima, K., Komada, M., and Ishikawa, T. (2007) Intramolecular disulfide bond is a critical check point determining degradative fates of ATP-binding cassette (ABC) transporter ABCG2 protein. J Biol Chem 282(38), 27841-27846
11月9日(土)に日本女子大学で開催された今回のワークショップには、冷たい雨がふる悪天候にもかかわらず、100名を超える参加者があった。ワークショップのテーマは、「細胞分裂のイメージング―ここまで見えてきた細胞分裂のメカニズム―」で、動物細胞、植物細胞、酵母細胞と材料も多岐にわたり、それぞれの分野で、第一線で活躍する研究者が、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡、ビデオ撮影など、さまざまな可視化技術を用いた、最先端の研究を紹介した。高度な内容であったが、わかりやすく、どれも非常に興味深い講演であった。特に、生きている細胞をビデオ撮影したものは、印象に残った。また、討論も活発に行われ、時間不足のため、いくつかの質問は後ほど個人的にされるように要請されるほどであった。講演会の後のアカデミックサロンは、新しい建物のとてもきれいな会場で行われた。この会にも大勢の方が出席し、なごやかな雰囲気の中で、おいしい料理とたくさんの飲み物をいただきながら、有意義な時間を過ごすことができた。
「衝撃的なイメージング画像に圧倒された」
参加して本当によかった、そう思えるワークショップに久しぶりに出会えた。
もっとも基本的かつ普遍的な生命現象でありながら、未だ関わる分子もその働きも十分に解明されていない細胞分裂。ある分子に着目したライブイメージングが、いかに新しい発見をもたらすか、あらためて気付かされる感動的なワークショップだった。とくに、動物初期胚の細胞分裂の研究分野にいるものにとっては、普段、学会の講演や公表論文などで知る機会の少ない植物や酵母についての発表は、まさに目から鱗の連続だった。もっとも驚きだったのが、村田先生が報告された顕花植物における微小管枝分かれ形成であり、GFPラベルした微小管の挙動を追ったムービーをみたときには、なるほど!と、納得させられた。会場の馬淵先生から、動物細胞でみられるArp2/3を核としたアクチン枝分かれ構造を例にあげて植物での微小管枝分かれにおける分岐タンパク複合体はどのようなものであるか、という質問があった。残念ながら明らかにされていないとのお答えだったが、私も早く知りたいと思う。このような構造は動物細胞に本当にないのだろうか?ラボに帰って自分のとったデータを見たくなった。もうひとつ衝撃的だったのがラストの仁木先生の講演で見せていただいた“プチッと切れたあとにrotateする“分裂酵母の分裂期染色体。もともと九州帝大農場のイチゴから分離され、ご自身の研究室でも追試をして分離されたS. japonicusという日本発の材料を用いての発表だった。この分裂酵母はまた、S. pombeよりも大きな細胞であり3本の染色体をはっきりと観察できるという優れた特色をもつとのこと、新たな発見にはユニークな研究材料の選択も重要だ。回転する染色体、その方向は常に一定?その分子メカニズムは?質問したいと思ったが残念ながら時間切れとなってしまった。心配ご無用、そのあとのアカデミックサロンで仁木先生を捕まえてお話することができた。らせん卵割という左右に回転する細胞分裂を研究対象にしている私にとっては大変興味深く印象的なライブ観察像だった。今後の研究成果が待ち遠しい。
私は主に透過型電子顕微鏡を用いて植物の細胞内輸送やタンパク質分解の研究を行なってきました。最近は分泌機構を中心に研究を進めているので、昨年のワークショップ「ゴルジ装置と物質輸送のイメージング」に引き続き、今回のワークショップは非常に興味あるプログラムでした。
細胞分裂は細胞骨格の再編成だけでなく物質輸送や複製など様々なイベントが起きているので、顕微鏡で観察するのには非常に面白い現象です。しかしながら、様々な現象が次々と起こっているが故に、まだまだわかっていないことが多々あります。今回、細胞分裂に関して最先端の研究を行なっている先生方のお話をご拝聴できたことは、研究を進めるに当り、方法論や考察などとても参考になりました。発表なさった先生方に共通することは、サンプルの選択やその調製法に工夫を凝らし、オリジナルで高度な可視化技術で現象を追っていることです。例えば、近藤先生は抗体を微量注入した細胞を電顕観察することでタンパク質の働きを証明し、また、村田先生はFE-SEMを用いたゴールドラベル法によりフィラメントのタンパク質の局在を明らかにし、そして、仁木先生は日本で見つかった分裂酵母をタイムラプス撮影することで新しい現象を明らかにされています。たとえ高価な可視化装置を購入したとしても、演者の先生方のようなアイディアや工夫がなければ、新しい物質や現象を見出すことはできません。本ワークショップを聞くことで、これから研究を進める際のたくさんのヒントを得ることができました。
このようなワークショップは、私のような可視化技術を駆使して生命現象を追っている研究者にとって、豊富な経験を持つ先生方のご意見を頂ける貴重な場であります。懇親会では普段多忙でお話できない諸先生方とお話でき、研究内容や可視化技術について多くのアドバイスやご意見を頂けたことは、私にとって非常に有意義でした。このような会を企画・運営して頂いた大隅先生をはじめ実行委員の先生方に厚くお礼申し上げます。
細胞分裂はずっと映像にまとめてみたいテーマでした。生物が増える、この不思議な現象の一番のもとである細胞分裂、細胞という複雑なシステムがどのようにして複製されていくのか。私が作っているのは教材用の映像ですが、その魅力を伝えられるようなものにしたい。そのためには最先端の研究も知っておかなければと、勉強するつもりで参加させていただきました。
少し前まで高校の教員をしていましたが、教科書には細胞分裂の過程がひととおり説明されています。例えば前期;核膜が消え、染色体が現れる。中期;染色体が赤道面に並ぶ。後期;染色体が分かれて両極に移動する。消えたり、現れたり、整然と動いたり、なんとも不思議な感じがすることが細胞の中では起こっているのですが、教員を始めた三十数年前には、そのしくみは厚い神秘のベールに包まれていたように思います。その後、染色体の移動のしくみなど科学雑誌などで読むたびにこんなことまでわかったのかと感心していましたが、今回、最先端の研究を知り細胞分裂のシステムのかなりの部分がベールの外に姿を現してきたという感を強くしました。しかも動く映像で細胞内構造の挙動を直接見られたのはすばらしいことでした。
植物細胞の紡錘糸が枝分かれによって出来てくるらしいということには大変興味をそそられました。中心体とは一体何なのか、どうして高等植物には無くなったのか、その具体的な手がかりが見つかったようで研究の発展が楽しみです。
小胞体やゴルジ体など膜の形成に酵素などの多くのタンパクが関係し、しかも分裂の時期により、あるいは膜の種類により異なる補助因子がはたらいているということも驚きでした。しかもエネルギーを使って。脂質だから何となく自然に膜になるのだろうというぐらいのイメージしか持っていませんでしたので。けれども考えてみればこのようなしくみがあるからこそ高度に分化した膜のはたらきがあるのだと納得できます。小胞体やゴルジ体、核膜なおの細胞内の膜構造がどのように形成されてきたのかということにも関心がありますが、こういった研究で明らかになってくるのかもしれないという感想をもちました。
まだまだ書ききれませんが、このワークショップではたくさんの知的刺激を受けることができました。そして講演の他にも得るものがもうひとつ、それは以前からお名前を存じていました、私とほぼ同姓同名の堀田康雄先生にお会いできたことです。(私のほうは堀田康夫です)大変光栄でした。
私の細胞分裂の映像教材の内容は、大部分が古典的なもので、まだ簡単なものが少し撮影してあるだけですが、これから2〜3年かけて制作していく予定です。分子メカニズムの話も少し入れて魅力あるものにできればと考えています。
綜合画像研究支援におかれましては、認定NPO法人化されました由、心よりお慶び申し上げます。またそれを記念した第4回可視化技術ワークショップが大変盛会のうちに催されたことにお祝い申し上げます。
この第4回可視化技術ワークショップに参加させていただき、7人の第一線の先生方の講演を聞くことが出来ました。いずれの講演も内容が濃く、且つそれぞれの分野での最先端の知見の紹介があり、日頃実業に直面している私にとりましては久々にサイエンティフィックな刺激に浸かる事が出来ました。今回ご紹介いただいた細胞内の微細でありながら、且つある時にはダイナミックに変化する構造を可視化する技術の進歩については改めて驚かされ、私のテーマとしております出芽酵母の生理代謝の理解や制御等へも活用できないか検討していきたいところでございます。弊社の方針である「技術立社」を体現するためにも、今後このようなネットワークを通じて先生方とコラボレーションする機会があることを夢見ております。
末筆ながら、綜合画像研究支援の益々のご発展をお祈りいたします。
「認定NPO法人化記念第4回可視化技術ワークショップ」に参加しました。NPOが問題視されているなかでの新規の認定は大変だったことと思います。当日、外ではぽつぽつと冷たい雨が降っていたのですが、会場は多数の参加者の熱気で暑いくらいでした。
この会では、毎回驚きの画像を見せて頂きますが、今回は、副題の「ここまで見えてきた細胞分裂のメカニズム」の通り、まるでプロの作ったCGを見ているような、生きた細胞分裂のライブ画像を見せて頂きました。動物細胞の小胞体やゴルジ装置は、間期においてはネットワーク構造や扁平膜積層構造を呈していますが、細胞分裂期にはバラバラになって断片化し、娘細胞内に分配されて、再びネットワークや積層構造を構築する というライブ画像には驚きました。「Seeing is believing」であり分裂の様子が良くわかりました。レーザー顕微鏡像は電顕像と併用して評価されており、電顕像を観てきた者にとっては納得できるイメージでした。今後も色々な蛍光プローブが開発され、分解能の高いレーザー顕微鏡やテラヘルツエミッション顕微鏡など新しいツールが開発されていますが、電顕像と同様に、レーザー顕微鏡像も、「味付けをして間接的にターゲットを見ている」ということを頭のどこかにおいて置く必要があると思っています。
また、細胞小器官はそれぞれ特異的な形態をしていますが、太古から分裂を繰り返しながら、現在の形態になっているわけで、夫々の形には意味があるはずです。今後、ゲノムの分配や分子メカニズが解明され、その意味が明らかになる日を楽しみにしています。
写真集
![]() 受付風景 |
![]() 開会の挨拶をする大隅正子理事長 |
![]() 新潟医療福祉大学健康科学部 |
![]() 癌研究会癌研究所実験病理部 |
![]() 北里大学医学部解剖学教室 |
![]() 九州大学大学院医学研究院・分子生命 |
![]() 自然科学研究機構基礎生物学研究所 |
![]() 学習院大学理学部化学科 |
![]() 情報・システム研究機構国立遺伝学研究所 |
![]() 日本女子大学理学部 |
![]() 聞き入る参加者 |
![]() 熱心に質問する参加者 |
![]() 熱心に質問する参加者 |
![]() 演者と座長の方々 |














